コラム

国立新美術館にて開催『至上の印象派展 ビュールレ・コレクション』の見どころを紹介

投稿日:2018/02/13

    東京、六本木の国立新美術館にて2018年2月14日(水) ~ 5月7日(月)の日程で開催の『至上の印象派展 ビュールレ・コレクション』解説編です。世界有数のプライベート・コレクションの中から、印象派の名画が多数展示されるこの展覧会の概要と見どころを解説します。

 初日に行ったレポート記事はこちら
(レポート編 『至上の印象派展 ビュールレ・コレクション』を国立新美術館にて 初日に行った感想、見どころ、混雑状況もお伝えします。 - Art-Exhibition.Tokyo)

世界屈指の絵画収集家、ビュールレが集めた名画の数々を展示

 

 本展では、世界屈指の絵画収集家として名を馳せたエミール・ゲオルク・ビュールレが、生涯をかけてコレクションした「ビュールレ・コレクション」の中から、印象派・ポスト印象派の傑作64点が展示されます。さらに、そのうちの約半数は日本初公開。絵画史上、最も有名な少女像ともいわれる《イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢(可愛いイレーヌ)》(上画像右)や、セザンヌの肖像画において最高傑作と称され、2008年には盗難の被害にもあった《赤いチョッキの少年》(上画像左)も来日します。

「ビュールレ・コレクション」がまとまって観られるのはこれが最後

 コレクションの質の高さゆえに、世界中の美術ファンから注目されている「ビュールレ・コレクション」ですが、 その全ての作品が2020年完成予定のチューリヒ美術館の新館に移管され、常設展示されることが決まっています。その為、コレクションがまとまって観られるのはこれが最後の機会となります。

コレクションの全てを一人で集めた収集家ビュールレ

f:id:async-harmony:20180215213359j:plainエミール=ゲオルク・ビュールレ 1950年頃 Photo: Foundation E.G. Bührle Collection, Zurich (Switzerland)

 1890年ドイツに生まれたエミール・ゲオルク・ビュールレは、大学で文学、哲学、そして美術史を学びました。1920年に銀行家の娘と結婚し、義父が買収した企業の再建のためスイス・チューリヒにやってきます。1937年に同社のオーナーになると同時に、絵画収集を始めます。その後は実業家として成功して富を築き、世界各国から作品を購入しました。コレクションはチューリヒにある邸宅の隣の別棟に飾られ、1956年に亡くなった後は妻子によりビュールレ美術館として一般公開されました。

 収集家としては、購入したレンブラントやファン・ゴッホの自画像が贋作であったり、収集した作品がナチスによる略奪美術品とされ、旧蔵者への返却を命じられるなど多難な道のりを経験しますが、歴史的画家の代表作を多数含んだ彼のコレクションは非常に高い評価を受けています。スイス国外にコレクションがまとまって公開されたのは過去に数回のみです。

盗難にあった4点も勢揃い

 2008年2月10日、強盗団によってビュールレ美術館から4点の絵画が盗まれ世界的なニュースになりました。盗難にあったのは、上記のセザンヌ《赤いチョッキの少年》のほか、ファン・ゴッホの《花咲くマロニエの枝》、ドガの《リュドヴィック・ルピック伯爵とその娘たち》とモネの《ヴェトゥイユ近郊のケシ畑》の4点。ゴッホとモネは同月中に、ドガとセザンヌは2012年までに無事回収されました。この盗難事件以降、一般公開は規制されましたが、本展にはこれら4点も全て展示されます。

f:id:async-harmony:20180215235036j:plainフィンセント・ファン・ゴッホ 《花咲くマロニエの枝》 1890年 油彩、カンヴァス 73×92cm  チューリヒ、E.G.ビュールレ・コレクション財団蔵

 

エドガー・ドガ 《リュドヴィック・ルピック伯爵とその娘たち》 1871年頃 油彩、カンヴァス 65×81cm  チューリヒ、E.G.ビュールレ・コレクション財団蔵

誰もが知る歴史的画家による傑作ばかり 
まさに“至上の”印象派コレクション

 本展に出品されるのは、ドラクロワ、ドガ、マネ、ルノワール、ファン・ゴッホ、ゴーギャン、モネ、セザンヌ、マティス、ピカソといった誰もがその名を知る歴史的画家の作品ばかりです。なかでも印象派・ポスト印象派の作品は、ファン・ゴッホの《日没を背に種まく人》やモネの《ジヴェルニーのモネの庭》など傑作揃いです。

 また、本展では肖像画や風景画、さらにはその後のモダンアートへの影響といった10のテーマごとに様々な角度から印象派、ポスト印象派の作品を紹介しています。

f:id:async-harmony:20180214005435j:plainフィンセント・ファン・ゴッホ 《日没を背に種まく人》 1888年 油彩、カンヴァス 73×92cm チューリヒ、E.G.ビュールレ・コレクション財団蔵

 

f:id:async-harmony:20180214005455j:plainクロード・モネ 《ジヴェルニーのモネの庭》 1895年 油彩、カンヴァス 81.5×92cm チューリヒ、E.G.ビュールレ・コレクション財団蔵

印象派とポスト印象派

 印象派は、19世紀後半のフランスで起こった芸術運動で、モネの作品《印象・日の出》がその名の由来と言われています。それまでのアカデミックな絵画のルールへの反発として、細かな線や輪郭を描くのでなく、絵筆で自由に絵の具をのせて色彩を重視した絵を描いたり、当時の実生活の風景も描かれました。それまでは静物画や肖像画はもちろん、風景画でさえもアトリエで描かれていましたが、印象派画家は積極的に戸外でも描きました。

 また、それらの運動に影響を受けつつも反発し、独自の技術や作風を追及したことで20世紀の前衛芸術の先駆けとなったファン・ゴッホ、ゴーギャン、セザンヌなどはポスト印象派と呼ばれています。この呼び方はあくまでも、印象派の後にフランスを中心として、主に1880年代から活躍した画家たち全体を指す便宜的なものであり、それぞれの画家の作風に共通性はほとんどありません。

出品作のおよそ半数が日本初公開

 本展には珠玉のコレクションの中から厳選された約60点が出品されますが、そのうちの約半数は日本初公開です。なかでも最大の見どころは、モネの代表作の一つであり、高さ2メートル×幅4メートルの大作《睡蓮の池、緑の反映》です。ビュールレが最も大切にしていた作品であり、これまでスイス国外には一度も出たことがありません。それが今回初めて日本にやってくるのです。そのほか、ゴーギャン、セザンヌ、ピサロ、ピカソに至るまで、多くの有名画家の初来日作品が展示されます。

f:id:async-harmony:20180214001505j:plainクロード・モネ 《睡蓮の池、緑の反映》 1920-26年 油彩、カンヴァス 200×425cm チューリヒ、E.G.ビュールレ・コレクション財団蔵

 

f:id:async-harmony:20180214005115j:plainカミーユ・ピサロ 《ルーヴシエンヌの雪道》 1870年頃 油彩、カンヴァス 43.5×65.5cm チューリヒ、E.G.ビュールレ・コレクション財団蔵

最後に

 本展では、誰もがその名前を聞いたことのある有名画家たちの作品が並び、そのどれもが間違いなく傑作、名作と言われるものです。さらにそのうちの約半数が、これまで画集などでしか観ることのできなかった日本初公開作品であり、それらがまとまって観られる最後の機会です。ぜひお見逃しなく。

以上、『至上の印象派展 ビュールレ・コレクション』の解説でした。

実際に観に行ったレポート記事はこちら
(レポート編 『至上の印象派展 ビュールレ・コレクション』を国立新美術館にて 初日に行った感想、見どころ、混雑状況もお伝えします。 - Art-Exhibition.Tokyo)

開催概要

会期:2018年2月14日(水) ~ 5月7日(月)
開館時間:午前10時~午後6時
(毎週金・土曜日、4月28日(土)~5月6日(日)は午後8時まで) ※入場は閉館の30分前まで
休館日:毎週火曜日(ただし5月1日(火)は除く)
会場:国立新美術館 企画展示室1E〔東京・六本木〕

観覧料金

当日券 一般1,600円  大学生1,200円  高校生800円
前売券/団体券 一般 1,400円 大学生1,000円 高校生600円

・団体券は国立新美術館のみ販売(団体料金の適用は20名以上)
・中学生以下無料 ・障がい者手帳をご持参の方(付添の方1名を含む)は無料
・前売券は2017年10月12日(木)~2018年2月13日(火)までの販売 ※ただし国立新美術館では2月12日(月・祝)まで

巡回情報

東京展終了後は下記のとおり巡回します。

【福岡展】
7月16日(月・祝)九州国立博物館
【名古屋展】
9月24日(月・祝)名古屋市美術館

Copyright© Art-Exhibition.Tokyo , 2019 All Rights Reserved.