レポート編 『ルドン―秘密の花園』展を三菱一号館美術館にて 感想と見どころを紹介します。

 東京、丸の内の三菱一号館美術館にて2/8から開催中の『ルドン―秘密の花園』展を観に行きました。ルドンが描いた「植物」に焦点を当てたこの展覧会の感想と、実際に観に行った上での見どころを紹介します。

 概要と予備知識を解説した解説編はこちら
(解説編 『ルドン―秘密の花園』 三菱一号館美術館 展覧会を楽しむための予備知識を解説します。 – Art-Exhibition.Tokyo)


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お洒落な美術館「三菱一号館美術館」

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 展覧会の感想の前にお伝えしたいのが、会場である「三菱一号館美術館」についてです。東京丸の内に建つ、まさに“大人の美術館”といった感じの同館はとにかくお洒落。館内も非常に落ち着いた雰囲気が漂っていて、美術鑑賞には最高の環境です。天井があまり高くなく、各部屋や通路もそれほど広くないのですが、それが大きな画廊といった感じで却って心地が良く、なんだかアーティスティックな気分にさせてくれます。2010年春の開館ということですごく綺麗です。

明治の日本で活躍したイギリス人建築家ジョサイア・コンドルと日本の職人達が創り上げた空間を、当時の製造方法や素材まで忠実に復元しました。このクラシカルな空間には、こだわりと見どころが散りばめられています。展覧会と共に建物も楽しみながら、あなたのお気に入りの場所を見つけてください。(三菱一号館美術館HPより)

 とあるように、レトロを感じさせる建物です。アクセスもいいですから仕事帰りにもおすすめですし、建物内にこれまたお洒落なカフェ・バー「Café 1894」があるので大人の美術館女子会なんていうのもいいかもしれませんね。カフェでは会期中限定のタイアップメニューもあるみたいです。

夜間開館日がおすすめ

 僕が行ったのは、会期2日目の金曜日18時過ぎ。祝日を除く毎週金曜日と第2水曜日、は21時まで開館しています。個人的に夜の美術館が大好きなので、あえて初日ではなく金曜日である2日目に行きました。館内の雰囲気はもちろん、敷地内にはイルミネーションが施されていてとても綺麗でした。展覧会の方は、金曜日の夜ということでスーツを着たサラリーマンの方も多く見られましたが、かなり空いていて快適に鑑賞できました。全て観終わるのに、ゆっくり鑑賞して1時間半はかかりました。

音声ガイドは俳優の石丸幹二さん

 音声ガイドはミュージカル「オペラ座の怪人」(劇団四季)でデビューし、近年は、俳優活動、ソロの歌手活動に加え、「題名のない音楽会」の司会も務める石丸幹二さんが担当しています。 石丸さんの落ち着いた声も、BGMも雰囲気抜群でした。3階の展覧会入口前にて1台520円で借りられます。

図録は情報盛り沢山

 出展作品の写真はもちろん、コラムも盛り沢山で非常に勉強になります。 表紙には、ドムシー城の食堂壁画のうちの一枚《黄色い花咲く枝》が採用されています。価格は2,300円で、ショップ(Store 1894)で購入できます。この他にも素敵なグッズがたくさん販売されていました。そのなかでもやはり、《グラン・ブーケ》が印刷されたスカーフやハンカチが目を引きましたね。


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「黒」と「色彩」の対比が非常に印象的

 本展においてまず注目すべきなのは、ルドンのキャリアにおける「黒(ノワール)」の時代と「色彩」の時代の対比です。詳しくは解説編に書きましたが、ルドンは50歳前後を境に作風を一変させています。リトグラフや木炭画によって人間の内面世界をモノクロで描いた「黒」の時代に対して、キャリア後半の「色彩」の時代には色鮮やかな色彩を用いて神話や花々を描きました。眼の付いた植物と、花瓶に挿した美しい花束が同じ画家による作品だということに、改めて驚かされます。本展では、「植物」のモチーフに焦点を絞ったことで、より顕著に画家としての振り幅を感じることができます。


f:id:async-harmony:20180208232033p:plainオディロン・ルドン《『起源』II. おそらく花の中に最初の視覚が試みられた》1883年 リトグラフ/紙(シーヌ・アプリケ) 22.3×17.2cm 岐阜県美術館蔵


f:id:async-harmony:20180212165319j:plainオディロン・ルドン《日本風の花瓶》1908年 油彩/カンヴァス 92.7 x 65.0 cm ポーラ美術館蔵

幻想的な世界観

 象徴主義に分類されるルドンは、人間の内面に目を向けた幻想的な作品を描きましたが、それはモチーフ・テーマの選択だけではなく、その表現の仕方や色使いに現れています。特に「色彩」の時代における、淡い輪郭で様々な色が溶け合っているような色使いは、まさにそれ自体が人の心を表しているかのようです。



f:id:async-harmony:20180212204708j:plainオディロン・ルドン《オルフェウスの死》1905-1910年頃 油彩/カンヴァス 50.0×73.5cm 岐阜県美術館蔵

 そんな中、下の《ドムシー男爵夫人の肖像 》のように、比較的輪郭のはっきりした油彩画もあります。却って印象に残りますね。しかしこの絵、背景はルドンらしい淡い色使いですし、植物も描かれています。肖像画でありながら人物を中心には配置せず、背景も含めた幻想的な世界観に仕上げているのはルドンならではです。ぜひ注目してみてください。



f:id:async-harmony:20180212211724j:plainオディロン・ルドン《ドムシー男爵夫人の肖像 》 1900 年 油彩/カンヴァス 74.0×68.0 cm オルセー美術館

これが最後かもしれない一堂に会したドムシー城の装飾壁画

 やはり本展最大の見どころは、《グラン・ブーケ(大きな花束)》を中心とするロベール・ド・ドムシー男爵の城館を飾った16点の壁画ではないでしょうか。《グラン・ブーケ》は三菱一号館美術館に所蔵されて以降、同館にて幾度か公開されてきましたし、その他の15点は現在フランス・オルセー美術館所蔵ですが、日本でも公開されたことがあります。しかし、日本においその両方を合わせた16点が同時に展示されるのは今回が初めてのことです。そして、サイズが大きくデリケートな状態なため、全てが揃う最後の機会になる可能性が高いとも言われています。

 てっきり16点が一部屋に展示されているのかと思っていましたが、実際には3部屋に分けての展示でした。《グラン・ブーケ》に関しては専用のエリアが作られており、美術館のこの作品に対する強い想いが伝わってきます。暗い部屋の中で照明によって照らされる《グラン・ブーケ》は本当に美しく、思わず立ち尽くしてしまいました。サイズも248.3×162.9cmとかなり大きいです。

 実は、この絵に対してこだわりを持ったのはルドンも同じです。ルドンに食堂壁画の制作を依頼したドムシー男爵は、手紙で「赤や黄の暖色を主とするべきで、青はそぐわない」と伝えています。その注文通りに15枚の壁画はほぼ暖色で描かれましたが、この《グラン・ブーケ》のみは青が中心となった色使いとなっています。ルドンにとっても特別な作品だったのでしょう。

 f:id:async-harmony:20180208235154p:plain《グラン・ブーケ(大きな花束)》1901年 パステル/カンヴァス 248.3×162.9cm 三菱一号館美術館蔵

最後に

 ルドン作品の幻想的な世界観とお洒落な美術館の雰囲気によって、とても充実感を得られる“大人の展覧会”でした。繰り返しになりますが、比較的空いていてイルミネーションなども含め雰囲気が良い夜間開館日がおすすめですよ。また会期後半になるにつれ混雑することが予想されますので、早めに行かれた方がいいと思います。


f:id:async-harmony:20180210165208j:plain(イルミネーションは恐らく会期終了まではやっていないと思いますので見たい方はお早めに。)


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開催概要

会期:2018年2月8日(木)~5月20日(日)
開館時間:10:00~18:00(祝日を除く金曜、第2水曜、会期最終週平日は21:00まで)
※入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日(但し、祝日の場合、5/14とトークフリーデーの2/26、3/26は開館)

観覧料金

 一般 1,700円 高校・大学 1,000円  小・中学生 500円

アフター5女子割:第2水曜日17時以降/当日券一般(女性のみ)1000円
※他の割引との併用不可 ※利用の際は「女子割」での当日券ご購入の旨お申し出下さい。

アクセス

 会場は東京駅から徒歩5分とかなり近いです。今回はJR東京駅、丸の内南口からの道のりを簡単に紹介します。

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こちらお馴染みの東京駅丸の内南口。夜は一段とお洒落ですね。出たらすぐ左の信号を渡ります。

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横断歩道を渡り終えたら「KITTE」という商業ビルに沿って右手方向に進みます。

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写真奥に見える信号をそのまま渡り左に曲がります。

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すぐに小さな信号があり、それを渡ってからそのまま進んだら右手に展覧会の看板が見えてきます。

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右に曲がり赤レンガ造りの建物沿いに歩いたら到着です。