上野周辺 西洋美術

王の画家にして画家の王『ルーベンス展-バロックの誕生』の見どころや注目作品を紹介

ルーベンス以外も良作揃い

 ルーベンスは次世代の画家にさまざまな影響を与えました。本展ではそんなルーベンスの影響を感じさせる画家の作品や同時代の画家による作品も多数展示されており、どれも見逃せない良作ばかりです。

シモン・ヴーエ《聖イレネに治療される聖セバスティアヌス》

シモン・ヴーエ《聖イレネに治療される聖セバスティアヌス》

シモン・ヴーエ《聖イレネに治療される聖セバスティアヌス》1622年頃 油彩/カンヴァス ミラノ、ジャンルイージ・コンドレッリ・コレクション

 この作品は上で紹介したルーベンスによる《天使に治療される聖セバスティアヌス》と同じ主題が描かれていますが、ここでは天使ではなく、13世紀の『黄金伝説』の記述などに従って、聖イレネらがセバスティアヌスを介抱しています。

ピエトロ・ダ・コルトーナ《懲罰を受けるヘラクレス》

ピエトロ・ダ・コルトーナ (本名ピエトロ・ベッレッティーニ)《懲罰を受けるヘラクレス》

ピエトロ・ダ・コルトーナ (本名ピエトロ・ベッレッティーニ)《懲罰を受けるヘラクレス》1635年頃 油彩/カンヴァス ファドゥーツ/ウィーン、リヒテンシュタイン侯爵家 コレクション

 友人を殺した罰として、女王オンファレのもとで奴隷として働くヘラクレスが描かれています。棍棒を取り上げられ、糸紡ぎの道具が渡されています。コルトーナはこの絵を描くにあたり、ルーベンスによる同主題作品を参照しています。

ルカ・ジョルダーノ《パトモス島の福音書記者聖ヨハネ》

ルカ・ジョルダーノ《パトモス島の福音書記者聖ヨハネ》

ルカ・ジョルダーノ《パトモス島の福音書記者聖ヨハネ》1690-1700年 油彩/カンヴァス 個人蔵

 ルーベンスの作品から多くを学んだ画家、ジョルダーノによる『ヨハネの黙示録』の一節を描いた作品です。画面下でペンと書物を持っているのがヨハネ。大天使ミカエル率いる軍勢と、7つの頭・10の角をもつ龍との闘争を目撃しています。画面上部では神が悪に対して審判を下しており、右上の女性は天上の教会の象徴としての聖母です。

ヤーコプ・ヨルダーンスに帰属《ソドムを去るロトとその家族》

ヤーコプ・ヨルダーンスに帰属、 ルーベンスの構図に基づく《ソドムを去るロトとその家族》

ヤーコプ・ヨルダーンスに帰属、 ルーベンスの構図に基づく《ソドムを去るロトとその家族》1618-20年頃 油彩/カンヴァス 東京、国立西洋美術館

 国立西洋美術館所蔵の本作は、ルーベンスの助手のひとりであったヨルダーンスによるものと考えられています。絵画制作の注文が次から次へと押し寄せていたルーベンスは、イタリアから帰郷したあとアントウェルペンに大規模な工房を構え、多くの弟子や助手たちの手を借りてその注文の数々に応えました。ときには工房外の独立した助手に頼ることもあり、その代表的な画家がヨルダーンスです。ルーベンスは、自身の構想に基づいて弟子や助手に描き進めさせておき、最後に自分で仕上げを行なうという制作プロセスをしばしばとりました。

音声ガイドは長澤まさみさんが担当

ルーベンス展音声ガイド

 本展の音声ガイドは、女優としてテレビドラマや映画などで活躍する長澤まさみさんが担当しています。長澤さんは今回が音声ガイド初挑戦だそうです。話し方にはかなり気を使われたようで、非常に聞きやすいうえその落ち着いた声色は美術鑑賞にピッタリだと思いました。

 本展監修者である渡辺晋輔氏による特別解説も収録されているのですが、これがなかなか重要な解説で、先述のとおりこの時代の絵画は知識によって楽しむのが正しい楽しみ方だと思いますので、音声ガイドの利用を強くおすすめします。ルーベンスと同時代の作曲家による楽曲も雰囲気抜群です。

音声ガイド 貸出料金:お一人様一台550円(税込)
収録時間:約35分
ナビゲーター:長澤まさみ
特別解説:渡辺晋輔(本展監修・国立西洋美術館主任研究員)

バリエーション豊富なグッズにも注目

 美術館入口前の特設ミュージアムショップでは、本展限定のオリジナルグッズが販売されています。クリアファイルやポストカードなどの定番アイテムはもちろんですが、大人の女性に似合いそうなアクセサリー類なども多数ラインナップしています。かなり種類が豊富ですので、会場でチェックしてみてください。

ルーベンス展グッズ ノート、メモ

ルーベンス展グッズ

ルーベンス展グッズ ポストカード

ルーベンス展グッズ テープ

ルーベンス展グッズ キーホルダー

ルーベンス展グッズ タオル、ハンカチ

ルーベンス展グッズ アクセサリー

ルーベンス展グッズ のヴィタメール マカダミア・ショコラ

  展覧会図録は、作品解説はもちろん複数のコラムなども掲載されたルーベンスの秘密に迫る一冊となっています。そして表紙カバーは《エリクトニオスを発見するケクロプスの娘たち》と《パエトンの墜落》の2種類が用意されています。内容に違いはありませんので、お好みの表紙を選んでください。図録は展覧会特設ショップのほかに、 ・通信販売「朝日新聞SHOP」 ・銀座 蔦屋書店 でも購入可能です。

ルーベンス展図録

図録『ルーベンス展―バロックの誕生』
296ページ、A4版、カラー・モノクロ 3,000円 (税込)

『フランダースの犬』とのコラボグッズも

 日本においてルーベンスといえばやはり『フランダースの犬』ということで、本展ではかわいらしい限定コラボグッズが販売されています。ラインナップはミントタブレット、リップ缶、手ぬぐい、クリアファイルとなっており、それぞれ複数のデザインが用意されていました。本展観覧後に『フランダースの犬』を観ると、より感情移入できそうですね。

最後に

 西洋美術を語るうえで避けては通れないルーベンスですが、実際にその作品を観ると彼の偉大さがよくわかります。卓越した技術、鑑賞者に強く訴えかける人物の感情表現、そして大量の作品を生み出し続けた工房経営者としての手腕。画家というカテゴリーに収まりきらないスケールの大きさにはただただ感服です。とにかくゴージャスなルーベンスの作品は、悪く言えば非常に“こってり”しており、もしかすると日本人にとっては好みが別れるのかもしれません。日本では現在同じ上野で見られるフェルメールのような落ち着いた雰囲気の絵が好まれる傾向がありますからね。しかし、ルーベンスは美術好きなら必ず見ておくべき画家です。まとまって展示されることは滅多にない貴重な作品の数々をぜひお見逃しなく。

開催概要

ルーベンス展―バロックの誕生
会期 2018年10月16日(火)~2019年1月20日(日)
休館日 月曜日(ただし12月24日、1月14日は開館)、2018年12月28日(金)~2019年1月1日(火)、1月15日(火)
開館時間 9:30~17:30、金・土曜日のみ~20時 ※入館は閉館の30分前まで
会場 国立西洋美術館
〒110-0007 東京都台東区上野公園7-7

観覧料

  当日券 前売券/団体
一般 1,600円 1,400円
大学生 1,200円 1,000円
高校生 800円 600円
中学生以下 無料

※団体は20名以上
※学生券をお求めの場合は、学生証の提示が必要(小学生除く)
※障がい者手帳をお持ちの方とその介護者1名は無料(要証明)

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