特別展「人体―神秘への挑戦―」を国立科学博物館にて

 東京、上野の国立科学博物館にて2018年3月13日(火)~6月17日(日)の日程で開催中、特別展「人体―神秘への挑戦―」を観に行きました。本展の見どころ紹介、レポートをお送りします。


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多くの謎に包まれた人体の神秘を解き明かす

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 本展は、人体の仕組みを解き明かすために先人たちが積み重ねてきた探求の歴史と功績、そして最先端の研究という二つの軸を通して、人体研究の今と昔を紹介する展覧会です。

 人類が人体への理解を深めるきっかけとなった、レオナルド・ダ・ヴィンチが描いた精巧な人体解剖図や、16世紀の医学博士アンドレアス・ヴェサリウスが記した解剖学書『ファブリカ』などの優れた資料を展示するとともに、最先端科学によって原子レベルまで解明されつつある人体研究の歩みをたどります。天才物理学者アルベルト・アインシュタインの脳をヒントに、人体と脳の神秘に迫る展示も見どころ。私たちにとって最も身近でありながら、最大の謎である人体の世界を楽しみながら学ぶことができます。

万能の天才レオナルド・ダ・ヴィンチものめりこんだ世界

 レオナルド・ダ・ヴィンチといえば、「モナ・リザ」などの名画を描いたことで知られていますが、万能の天才であったダ・ヴィンチは中世ルネサンス期以降、人体を描くための理解を求めて遺体の解剖を行い、その仕組みに迫り、多くの人体解剖図を遺しました。この解剖手稿からは、彼が自ら人体の構造を説明することにのめりこみ、考えを巡らせた痕跡を見て取ることができます。

レオナルド・ダ・ヴィンチ 【右】『「解剖手稿」より頭部断面,脳と眼の結びつき部分』1490-92年頃(イギリス・ウィンザー城王室コレクション) 【左】『「解剖手稿」より消化管と腎臓、そして尿管部分』1508年頃(イギリス・ウィンザー城王室コレクション) Royal Collection Trust/© Her Majesty Queen Elizabeth II 2018

ヴェサリウスの革命的な解剖図譜『ファブリカ』

 16世紀の医学・解剖学者アンドレアス・ヴェサリウスは、現在のように防腐処理のなかった当時、迅速かつ正確に自ら人体解剖を行い、従来の伝統にとらわれず自分の目で観察したままの人体の姿を、7巻からなる解剖図譜『ファブリカ』に描き出しました。本展では、医学関係者なら知らぬ者はいないこの革命的な書物の初版本(1543年)が展示されます。

アンドレアス・ヴェサリウス『ファブリカ』 1543年 広島経済大学

精巧な復元の姿『ワックスモデル』

 人体の構造について学ぶには、解剖を行い自分の目で見て学ぶことが不可欠です。しかし、人体解剖は誰しもが容易にできることではありません。その代わりとして、各地で精巧な人体模型が数多くつくられました。現代に生きる私たちが見ても目を見張るほどの精密さで、なかでも18世紀以降ヨーロッパで製作され、博物館や教育機関で用いられたワックスモデルは、詳細な解剖技術と精緻な造形技術がつくり上げた精密な芸術品ともいえるものです。

『女性の頭部、胴体の解剖模型』1850-1900年 ブールハーフェ博物館 ©Rijksmuseum Boerhaave, Leiden V09106

驚異の再現力『キンストレーキ』

 オランダ語で「人工の死体」を意味する、紙粘土製の人体模型である『キンストレーキ』。 高価であったワックスモデルの代用として、フランス人解剖学者オヅーが開発したのがはじまりとされています。写真右は、加賀藩の蘭学医がオランダ海軍の軍医から購入したフランス製のものとされています。日本国内に現存するキンストレーキはわずか4体ですがそのうちの2体が本展で展示されます。
※『キンストレーキ』(女性)の展示期間は3月13日~5月17日まで

【左】『キンストレーキ』(女性) 19世紀 福井市立郷土歴史博物館 ※3月13日(火)~5月17日(木)までの期間限定展示 【右】『キンストレーキ』(男性) 19世紀 金沢大学医学部記念館

観察することの進化

 17世紀、オランダの科学者アントニ・ファン・レーウェンフックは、自作の顕微鏡で毛細血管とそこを流れる赤血球を確認しました。顕微鏡の発明はミクロの世界を拡大し、肉眼で見えなかったものを観察・研究することを可能にしたのです。本展では人体研究の発展に大いに貢献した最初期の顕微鏡が展示されます。

【左】『レーウェンフックの単式顕微鏡』1673-1723年頃 ブールハーフェ博物館 ©Rijksmuseum Boerhaave, Leiden V30337 【右】『18世紀の複式顕微鏡』1750-1800年頃 ブールハーフェ博物館 ©Rijksmuseum Boerhaave, Leiden V28771

最新の顕微鏡画像

 最先端の映像技術は、私たちの認知の限界に挑み続けてきました。生きたままの体内を色鮮やかに映し出す蛍光顕微鏡や、超ミクロの世界を立体的にとらえる電子顕微鏡など、これまでの価値観を劇的に変える装置が次々と生み出されています。会場内では、それらを用いた最新映像が多数紹介されます。

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ネットワークシンフォニー

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 「疲れた、しんどい」「ごはんが来たぞ!」 私たちの体内でそんな臓器たちの会話が飛び交っていることが、最新研究でわかってきました。「ネットワークシンフォニー」は、NHKスペシャル「人体 神秘の巨大ネットワーク」で紹介された、さまざまな“メッセージ物質”を各臓器がやりとりしているという新・人体観を、色や音で表現する空間です。

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レポート

大人から子どもまで楽しみながら学べる企画展

 国立科学博物館にて開催中の特別展「人体―神秘への挑戦―」は、レオナルド・ダ・ヴィンチをはじめとする先人たちの功績と、最先端の研究によって解明されつつある人体の秘密を紹介する企画展です。さまざまな歴史的資料や模型などの展示物、本物のヒトや動物の臓器までもが展示され、人体に関する知識が詳しく解説されています。私たちにとって最も身近でありながら、実はまったくといっていいほど理解できていない人体の謎を、大人から子どもまで楽しみながら学ぶことができます。

 解説が多く、非常に内容が充実しているため、観覧にはそれなりに時間がかかると思います。最低でも2時間、できればそれ以上時間がほしいところです。また当日に限り常設展も観ることができますので、そちらもしっかりまわるとなると丸一日かかります。ぜひ、ほかの予定は空けてじっくりと観覧してください。

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 会場の国立科学博物館は、常設展と特別展の入口が分かれています。写真向かって右側が本展を観覧する方専用の入口で、その左側が常設展の入口です。チケットは右の入口から入場後すぐに見えるチケットカウンターで購入することができます。

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 チケットを購入したらそのまままっすぐ進むと展覧会入口があります。すぐ横に無料のコインロッカーがありますので、荷物を預けたい方はこちらをご利用ください。

連日大混雑 土日休日は整理券の配布も

 本展は連日多くの方で大変混雑しており、土日にいたっては入場整理券が配られることもあります。この日は平日でしたが、待ち時間こそ発生していないものの、社会科見学と思われる学生さんの団体も多く見られ、会場内は非常に混雑していました。

 そんななかおすすめなのが、夜間開館(20時まで開館)している金・土曜の夕方以降です。13~15時ごろが一日の中で最も混雑する傾向があり、それを過ぎると少しずつ空いてくる場合が多いようです。社会科見学の学生さんなどの団体で来られている方々が、夕方までには少なくなるというのも大きく影響しているでしょう。個人的には、金曜日の17時以降が最もおすすめです。とはいえ、いつ行ってもがらがらということはありえないでしょうから、あくまでも参考までにとどめておいていただければと思います。

 本展公式ツイッター(@Jintai2018)にて、混雑状況が随時更新されていますので、あらかじめこちらを確認してから向かいましょう。

一部エリアに限り写真撮影が可能

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 本展は原則として写真撮影は禁止されていますが、一部エリアに限り撮影可能となっています。撮影可能エリアは展覧会終盤の方で、案内の看板がありますのでそちらが目印です。先に紹介した「ネットワークシンフォニー」や最新の顕微鏡画像などが撮影できます。

ゲノム情報によって復元された縄文人女性の顔

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 ニュースなどで話題となったこちらの“顔”も展示されています。縄文時代の遺跡から出土した人の歯からゲノム情報を解析して復元した女性の顔で、ゲノム情報を利用した縄文人の顔の復元は初めてことだそうです。

 復元されたのは、1989年に北海道・礼文島の船泊遺跡から出土した、約3800年前の40代と推定される縄文人の女性で、国立科学博物館や国立遺伝学研究所などのチームが臼歯約0.2グラムから抽出したDNAを分析し、全ゲノムを解析しました。その結果、これまではっきりしなかった肌の色などを正確に表現されています。こちらも撮影可能です。

音声ガイド・ナビゲーターは小島瑠璃子さん

 特別展「人体 ―神秘への挑戦―」では、タレントの小島瑠璃子さんが音声ガイド・ナビゲーターを務め、出展作品や私たちの体の機能・構造を分かりやすく紹介してくれます。音声ガイドでしか聞くことができない情報が満載で、非常におすすめです。

料金:520円(税込)
所要時間:約30分
解説ナレーター:安井邦彦監修者(篠田謙一博士・山田格博士)のスペシャルトラックも収録
製作:アコースティガイドジャパン

公式図録はまるで学術書

 本展の公式図録は、おおむね展覧会の内容に沿って構成されつつもその展示物を紹介するというよりは、“人体”についてのより深い解説がされたまるで学術書のようなつくりになっています。この内容で価格が2300円というのは良心的ですね。ちなみに、本展で展示されている動物の臓器などの写真も掲載されていますので、苦手な方はご注意ください。(ヒトの臓器の写真は掲載されていません)

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特別展「人体 ―神秘への挑戦―」公式図録 2,300円(税込) A4変型版/184ページ

バリエーション豊富なグッズにも注目

 展示エリアを出るとすぐ物販コーナーがあります。こちらでは図録やクリアファイルなどの定番アイテムはもちろん、さまざまなバリエーションのグッズが販売されています。会場限定グッズも用意されており、『カナヘイの小動物』とのコラボグッズなど、女性におすすめなかわいらしいグッズも盛りだくさんです。

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開催概要

特別展「人体―神秘への挑戦―」

会場:国立科学博物館(東京・上野公園)
会期:2018年3月13日(火)~6月17日(日)
休館日:月曜日 (3月26日(月)、4月2日(月)、4月30日(月・振替休日)、6月11日(月)は開館)
開館時間:午前9時~午後5時(金・土曜は午後8時まで)
※入場は各閉館時刻の30分前まで
※今後の諸事情により、開館日・時間等について変更になる可能性があります。

観覧料金

一般・大学生:1,600円 小・中・高校生:600円
※( )内は前売料金
※本券で本展を観覧された方は、同日に限り常設展もご覧いただけます。
※未就学児無料
※障害者手帳をお持ちの方とその介護者1名様は無料

東京・ミュージアムぐるっとパス2018の利用で、一般料金から100円引きになります。

主催者からの注意事項

ご観覧に際して

 本展覧会では、一部のエリアで、私たちの臓器の構造や機能を正しく知っていただくために、ヒトの臓器標本を展示しています。なお、展示にあたりましては、ご希望の方のみご観覧いただけるよう配慮しております。ご希望されない方のご観覧は、ご自身の判断によりお控えください。

 また、本展覧会では指定された場所以外での写真撮影は禁止です。ヒトの臓器標本の撮影も禁止です。以上のことをご了承のうえ、ご来場くださいますよう、ご案内申しあげます。

入場待ち列における整理券の配布について

 本展は土曜、日曜を中心に入場待ちの時間が長くなっております。
お客様が入場待ち列にお待ち頂く時間を出来る限り短くするため、以下の日程の中で混雑をしている時間帯は、入場時間を指定した整理券を配布いたします。

【整理券配布日】

土曜日、日曜日、祝休日および混雑が想定される日
混雑の際は、入場のためのチケット等をお持ちの方、未就学児の方に、特別展入口付近にて整理券をお渡しします。整理券は1人につき1枚お渡しします。代表の方がチケット枚数分および未就学児分を受け取ることが可能です。
・当日の整理券配布は、原則、本展最終入場時間(本展閉場時刻の30分前)までにお並びいただいたお客様にお配りします。
・整理券に記載された入場時間までは、常設展をご覧いただくなど館内でお過ごしいただくほか、館外で過ごしていただくことも可能です。
・整理券の配布状況については、本展公式ツイッター(@Jintai2018)などでお知らせします。
※整理券に記載された入場時間にご来場いただいた後も、待ち時間がある場合があります。
※状況により、上記以外の日に実施する場合や、運営方法が変更となる場合があります。ご了承ください。