東京、上野の森美術館にて開催中『VOCA展2018 現代美術の展望ー新しい平面の作家たち』のレポートをお送りします。
『FACE展2018』のレポートはこちら
(『FACE展2018 損保ジャパン日本興亜美術賞展』【東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館】レポートをお送りします。 - Art-Exhibition.Tokyo)
このページの見出し
VOCA展とは
1994年に第1回展が開催され、今回で25回目を迎えたVOCA(ヴォ―カ)展は、全国の美術館学芸員、ジャーナリスト、研究者などに40才以下の若手作家の推薦を依頼し、その作家が平面作品の新作を出品するという特殊な方式で続いてきました。これまでに850人を超える作家が出品し、その多くが本展をきっかけに国内、海外で活躍しています。
今回は作家34名(組)が出品し、そのなかから5名の選考委員によってVOCA賞1名、VOCA奨励賞2名、佳作賞2名が選ばれました。さらに、大原美術館賞が館の選考によって決定しました。
4×2.5m、厚さ20cm以内の平面作品という自由度の高い規定のもと、絵画はもちろんのこと写真や刺繍作品、デジタルアート作品など様々なジャンルの作品が出品されています。
現代ならではの斬新なアイディアの数々
本展に出品されている34点の作品は、すべて40才以下の若手作家によるものです。どれも現代ならではの斬新かつ刺激的な作品ばかりで、その表現はもちろんのこと、そこに込められたメッセージも見逃せません。じっくり時間をかけて作品と向き合ってみることをおすすめします。
VOCA賞
碓井 ゆい《our crazy red dots》糸、布
こちらが今回のVOCA賞を受賞した作品です。刺繍作品が入賞するというのがこのVOCA展の面白いところですね。多種多様な赤いドットを、不定形の布地をつなぎ合わせるクレイジーキルトという技法を用いて、日の丸のイメージを解体、再構築しています。
VOCA奨励賞
藤井 俊治《快楽の薄膜》油彩・アクリル・水彩・アルミ箔・雲母・ジェッソ、綿布
VOCA奨励賞
山田 七菜子《磯》油彩、カンヴァス
佳作賞
梅沢 和木《すべてを死るのも》アクリル・画像・ラメ・ペン他、パネル
佳作賞のうちの1点です。ネット上の画像を用いて、それら素材をを張り合わせるコラージュという技法が使われており、近くで見るとアニメキャラの画像などが組み合わされているのが確認できます。
佳作賞
森本 愛子《唐草文様》天然顔料・天然染料・膠・金箔・銀箔、絹
こちらも佳作賞の1点。斬新で刺激的な作品が多く展示されているなかで、逆に違和感を感じてしまうほど繊細な作品です。日本画の儚い美しさが溢れた素晴らしい作品で、個人的に日本画が好きなこともあり本展1番のお気に入り作品です。女性の着物に描かれた「唐草文様」が目を引きます。
大原美術館賞
浦川 大志《風景と幽霊》アクリル・ジェッソ、綿布・パネル
『VOCA展2003』VOCA賞受賞者、津上みゆきさんの個展も開催中
入口に向かって右手側にある、上野の森美術館の別館ギャラリーでは、『VOCA展2003』VOCA賞受賞者である津上みゆきさんの個展も開催されています。VOCA賞受賞作品はもちろん、最近の作品も展示されています。入場は無料ですので、こちらもお見逃しなく。
最後に
新宿で開催中の『FACE展』と同様に、若手作家の登竜門的な地位が確立されているコンクール展です。表現の斬新さはもちろん、「はっ」とさせられるようなメッセージ性や、作者の思いが感じられる作品ばかりで非常に刺激的でした。
少し気難しい、一見しただけでは何を表現しているのかわからない現代アート的な作品がほとんどですが、そういった作品こそ込められた真意を汲み取りたくて、思わず目を凝らして、耳を澄ましてしまいます。そうして得られる感動は、単なる芸術鑑賞の域にとどまらない大きなものだと思います。ぜひ日本における最先端のアートで、この刺激的な時間を過ごしてみてください。
以上、『VOCA展2018 現代美術の展望ー新しい平面の作家たち』 のレポートでした。
『FACE展2018』のレポートはこちら
(『FACE展2018 損保ジャパン日本興亜美術賞展』【東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館】レポートをお送りします。 - Art-Exhibition.Tokyo)
開催概要
会場:上野の森美術館
会期:3月15日(木)〜3月30日(金)
休館:会期中無休
開館時間:午前10時〜午後6時(入館は閉館の30分前まで)
入館料
一般600円/大学生500円/高校生以下無料
*障害者手帳をお持ちの方と付添の方1名は無料(要証明)
◆ 相互割引
「VOCA展2018」のチケットの半券で「FACE展 2018」の入場料が100円引となります。