展覧会情報

【展覧会情報】日本画の挑戦者たち ―大観・春草・古径・御舟―|山種美術館

現在も日本画壇を牽引する日本美術院の軌跡をたどる

 近代以降の日本画壇において、常に先導的な役割を担ってきた日本美術院。かつて東京美術学校の校長を務めた岡倉天心を中心に創立され、明治維新以降の西洋美術が流入する状況下で、それらに肩を並べる新たな日本画の創造に挑み続けました。

 今年、創立120年を迎えることを記念して開催される本展では、特に目覚ましい活躍をみせた横山大観、菱田春草、小林古径、速水御舟を中心に、日本美術院の草創期に活躍した画家から、現代の日本画壇を代表するにいたる同院の画家の優品を紹介し、画家たちの活動の軌跡をたどります。

 また、院展出品時から高評価を受けた古径の代表作《清姫》全8点を、約5年振りに一挙公開。さらに、映画「散り椿」の公開に合わせ、同題の原作小説(葉室麟 著・角川文庫)の表紙を飾った作品であり、昭和期に制作された作品で初めて重要文化財に指定された御舟《名樹散椿》(10月16日-11月11日公開)も特別展示されます。

※会期中、一部展示替えあり

小林古径《清姫》 のうち、上から「寝所」、「日高川」、「入相桜」 1930(昭和5)年 紙本・墨画/彩色

【重要文化財】速水御舟《名樹散椿》1929(昭和4)年 紙本金地・彩色(10月16日-11月11日展示)

第1章 日本美術院のはじまり

 さまざまな分野で西洋文化が流入した明治維新以降、美術においては西洋に肩を並べる日本美術の確立が急務とされました。東京帝国大学(現・東京大学)の教員であったアーネスト・F・フェノロサは、日本画の優位性を説き、伝統的な古美術の研究に基づく日本固有の美術の創造を主張し、その方針は狩野芳崖を中心に実践されます。さらにはフェノロサの弟子であった岡倉天心によって、理念の発展と体系化が進められ、1887(明治20)年には東京美術学校(現・東京藝術大学)が創立されました。

 校長であった天心はやがて反対派により学校を追われますが、橋本雅邦、横山大観、下村観山、菱田春草といったともに辞職した日本画家を含む26名によって、1898年、東京・谷中に美術大学の役割をもつ研究機関、日本美術院が旗揚げされたのです。

狩野芳崖《芙蓉白鷺》1872(明治5)年頃 紙本・彩色

橋本雅邦《不老門・長生殿》1907(明治40)年 絹本・彩色

横山大観 《燕山の巻》(部分)1910(明治43)年 紙本・墨画

下村観山《不動明王》1904(明治37)年頃 絹本・彩色

菱田春草《月下牧童》1910(明治43)年 絹本・彩色

第2章 再興された日本美術院

 岡倉天心の指導のもと、当初は研究会や展覧会開催など精力的な活動を行った日本美術院でしたが、大観、春草らが追求した「朦朧体」への酷評や経済面の悪化、主力メンバーの海外渡航といったさまざまな要因が重なって数年で運営は傾き、天心の死去後には休止状態に陥りました。

 しかしながら、1914(大正3)年9月、天心の一周忌を機に、その遺志を引き継いだ横山大観や下村観山、さらには今村紫紅、小林古径などの若手画家たちが再び谷中に集い、日本美術院は再興されます。大正から昭和初期にかけて同院を牽引した画家たちの活躍は目覚ましく、画壇において、在野の研究機関から官展と並び立つ存在へと成長させました。

横山大観《蓬莱山》1939(昭和14)年頃 絹本・彩色

木村武山《秋色》20 世紀(大正時代) 絹本・彩色

今村紫紅《早春》1916(大正5)年 絹本・彩色

富取風堂《もみぢづくし》1934(昭和9)年 紙本・彩色

速水御舟《春昼》1924(大正13)年 絹本・彩色(9月15日-10月14日展示)

第3章 戦後の日本美術院

 1945(昭和20)年の終戦を機に社会が大きく変わるにつれて、それまで信じられてきた価値観に対する懐疑的な風潮が高まります。美術界においても、「日本画滅亡論」さえ論じられるようになりますが、そんな画壇の再建をはかるため、日本画の新たな方向性が模索されました。

 そのなかで日本美術院では、再興時から組織を支えてきた横山大観、小林古径、安田靫彦、前田青邨らが、伝統的な東洋美術の研究に基づき新たな表現を加えた作品を発表します。それにより日本画壇において、古典絵画のうえに革新的な日本画を創造するという同院の結成以来の方針を示しました。

 その後は、ポール・セザンヌに刺激を受けた奥村土牛、それに続く世代でも、岩橋英遠や片岡球子、平沢郁夫、松尾敏男など、従来の日本画に新たな感覚を取り入れた画家が台頭しました。さまざまな方向性をもつ画家が活躍できる土壌は現在も引き継がれており、日本美術院の特色の一つとなっています。

安田靫彦《出陣の舞》1970(昭和45)年 紙本・彩色

松尾敏男《翔》1970(昭和45)年 紙本・彩色

平山郁夫《バビロン王城》1972(昭和47)年 紙本・彩色

小山硬《天草(洗礼)》1972(昭和47)年 紙本・彩色

田渕俊夫《輪中の村》1979(昭和54)年 紙本・彩色

宮廽正明《水花火(螺)》2012(平成24)年 絹本・彩色

西田俊英《華鬘》1983(昭和58)年 紙本・彩色

※ 掲載されている作品はすべて山種美術館蔵

開催概要

[企画展] 日本美術院創立120年記念 日本画の挑戦者たち ―大観・春草・古径・御舟―
会期 2018年9月15日(土)~11月11日(日)
休館日 月曜日[但し、9/17(月)、24(月)、10/8(月)は開館、9/18(火)、25(火)、10/9(火)は休館]
開館時間 10:00~17:00 ※入館は閉館の30分前まで
会場 山種美術館
〒150-0012 東京都渋谷区広尾3-12-36

観覧料

  当日券 前売/団体
一般 1,000円 800円
大学・高校生 800円 700円
中学生以下 無料

※団体は20名以上
※障がい者手帳をお持ちの方とその介護者1名は無料(要証明)

[お得な割引サービス]
・きもの・ゆかた割引:会期中、きもの・ゆかたで来館の方は、団体割引料金で観覧可能
・リピーター割引:本展使用済み入場券(有料)のご提出で会期中の入館料が団体割引料金で観覧可能
(1枚につき1名1回限り有効)。
※リピーター割引は、同一の展覧会を2回目以降にご覧いただく場合に有効。 他の展覧会の入場券はご使用いただけません。
※ 複数の割引の併用はできません。

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学芸員によるギャラリートーク

日時:2018年9月19日、26日、10月3日、10日、17日、24日
各日午前10時30分~(所要時間約40分、1回のみ)
解説:山種美術館学芸員
定員:各日 25名様(先着順)
※事前予約は受け付けていません。
当日午前9時50分よりロビーにて整理券を先着25名に配布。(整理券は1人1枚限り)
集合場所:当日山種美術館1階ロビー
参加料:無料(但し、当日有効の入場券が必要)

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