展覧会情報

【展覧会情報】マジック・ランタン 光と影の映像史|東京都写真美術館

プロジェクションの原点
「マジック・ランタン」から始まる映像の歴史を概観する

 近年大きな注目を集めているプロジェクション・マッピングをはじめとする、スクリーンや壁に映像を投影する「プロジェクション」という行為は、17世紀半ば、映写機やプロジェクターの原型である「マジック・ランタン」という装置の発明によって世界中に広がりました。

 本展では、人々がひとつの映像を一緒に見るという行為が、いつ、どのように生まれ、私たちの社会に定着するようになったのか、その歴史を紹介するとともに、マジック・ランタンの現代性に光を当てます。

 

1.マジック・ランタンの誕生

 マジック・ランタンは、17世紀半ばにオランダのクリスティアン・ホイヘンス(1629-95)によって発明されたと考えられています。その後ヨーロッパに伝播し、18世紀半ばにはファンタスマゴリアと呼ばれる幽霊ショーに用いられ、パリを中心に人気を博しました。

ファンタスコープ・モルテニ 1830-50 年 フランス 東京都写真美術館蔵

ファンタスマゴリアのスライド 1830-50年 フランス ガラスに手彩色、木枠 東京都写真美術館蔵

ウジェーヌ・シャルル・フランソワ・ゲラール《旅人たち #18:魔女の穴(黒い森)での朝食》 1854 年 フランス リトグラフ、手彩色 東京都写真美術館蔵

2.マジック・ランタンの流行

 19世紀になると、マジック・ランタンはさまざまな改良が施され、安価な家庭用の製品も出回るようになったことで、より人々の身近な存在となりました。興行師が用いるマジック・ランタンのほか、科学投影用から玩具まで、その用途は細分化されていき、製造者によって形態や機能、装飾など工夫が凝らされるようになります。

作者不詳(マジック・ランタンのトレード・カード)19 世紀頃 フランス リトグラフ 東京都写真美術館蔵

作者不詳(マジック・ランタンのトレード・カード) 19世紀頃 フランス リトグラフ 東京都写真美術館蔵

ランテルヌ・フォトジェニク(ジュール・ドゥボスク製、フランス)1850年以降 フランス 東京都写真美術館蔵

3.日本のマジック・ランタン

 マジック・ランタンは、日本に2度渡来しています。1度目は江戸時代(18世紀後半)、オランダ経由で長崎に入り、江戸にまで伝わりました。上方では「錦影絵」、江戸では「写し絵」と呼ばれ、日本独自の発展を遂げます。2度目は明治時代(1870年代)、手嶋精一によって欧米から持ち帰られ、「幻燈」という名で普及しました。はじめは大衆の娯楽であった日本のマジック・ランタンですが、のちに近代人を育てる視覚教具として定着していきます。

4.スライド

 「スライド」は、マジック・ランタンによって投影される内容(コンテンツ)のことで、これを文字通りスライドさせることで、複数の絵柄を連続して投影したり、絵物語のようにつながった絵柄を流れるように見せることができます。19世紀には、高級品から大量製造品まで、幅広い「スライド」が製造・販売・消費されました。また写真の発明によって、写真を焼き付けた「スライド」も登場します。

クロマトロープ 19世紀 ガラスに手彩色、金属枠

5.マジック・ランタン以後

 19世紀末、トーマス・エジソンによってキネトスコープが発明され、リュミエール兄弟によってシネマトグラフが発明されました。それにより映画が娯楽として定着しますが、マジック・ランタンが消えてなくなることはなく、その仕組みやアイディアは現代まで受け継がれています。映写機による投影も、プロジェクション・マッピングも、さらにはプレゼンテーションに使用する「スライドショー」も、すべてマジック・ランタンから始まる、プロジェクションの歴史のなかにあるのです。

小金沢健人《速度の落書き》2008 年 ヴィデオ・インスタレーション サイズ可変 作家蔵[参考図版]

開催概要

マジック・ランタン 光と影の映像史
会期 2018年8月14日(火)~10月14日(日)
休館日 月曜日※注
開館時間 10:00~18:00 木・金曜日のみ~20時 ※入館は閉館の30分前まで
会場 東京都写真美術館
〒153-0062 東京都目黒区三田1-13-3

※(ただし、9月17日(月・祝)、9月24日(月・振休)、10月1日(月)、10月8日(月・祝)は開館、9月18日(火)、9月25日(火)、10月9日(火)は休館)

観覧料

  当日券 団体
一般 500円 400円
学生 400円 320円
中高生・65歳以上 250円 200円
小学生以下 無料

※団体は20名以上
※都内在住・在学の中学生は無料
※第3水曜日は65歳以上無料
※障がい者手帳をお持ちの方とその介護者1名は無料
※東京都写真美術館年間パスポート提示者無料(同伴の方1名まで無料)

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