東京、八王子市の八王子市夢美術館にて2018/04/06(金)〜2018/05/13(日)の日程で開催中、『―国芳、広重、国貞、豊国、英泉らが描く― 浮世絵ねこの世界展』を観に行きました。本展の見どころ解説とレポートをお送りします。
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有名絵師による浮世絵に描かれた猫たちが大集合
現在、日本では猫が空前の大ブームになっていると言われています。甘えてくるかと思えば、いたずらをしたり、時には窓の外をじっと眺めて、なにか人には思い寄らない考え事をしているようにみえたり。多彩な表情を見せてくれる猫は、私たち人間にとってもはやペットという領域を超え、友人ともいえる存在です。
江戸・明治時代の浮世絵師たちは、そんな愛すべき猫たちの姿を、さまざまな形で描き出しました。ありのままの姿を写実的に描いた猫、美人や子供たちの傍で幸せそうな様子の猫、擬人化され、人間のように振る舞う猫、そして妖怪「化け猫」など。
本展では、「猫の浮世絵=国芳」と言われるほど浮世絵で猫を描いた歌川国芳や、「名所江戸百景」の中に猫を描いた歌川広重。美人と共に猫を描いた歌川国貞、歌川豊国、渓斎英泉など、江戸・明治期に活躍した人気の浮世絵師たちによる「浮世絵ねこの世界」が一挙に紹介されます。絵師たちがさまざまな個性で描いた浮世絵の中で自由自在に動き回る猫たちのオンパレードを楽しむことができます。
ありのままの猫
本展ではまず、猫のありのままの姿を描いた作品が展示されています。猫のかわいさは今も昔も変わりません。
お茶目な猫
江戸時代末期を代表する浮世絵師である歌川国芳は、斬新なデザイン力や奇想天外なアイディア、確実なデッサン力によって浮世絵の枠にとどまらない作品を生み出しました。美人画や妖怪画などがよく知られていますが、無類の猫好きであった国芳は、猫愛に溢れた絵を数多く描いています。本展には、国芳のユニークな発想によるお茶目な猫たちが展示されています。
美人画の中の猫
美人画を得意としていた国芳ですが、彼はその中にたびたび猫を登場させました。また、歌川国貞、歌川豊国、渓斎英泉をはじめ、多くの絵師が美人と共に猫を描いた作品を残しています。
猫と子供
明治以降には、子供たちを描いた絵に猫を登場させる例が増えていきます。無邪気な子供と愛らしい猫はとても相性がいいのです。
シュールでコミカルな擬人化猫たち「猫のおもちゃ絵」
浮世絵には、子供が切ったり貼ったりして遊ぶことができる「おもちゃ絵」というジャンルがあり、江戸末期から明治中頃にかけて大流行しました。子供は、これらおもちゃ絵で遊びながら社会の勉強もしたのです。
怖い猫
化け猫の怪談は江戸時代に全盛期を迎え、「鍋島の化け猫騒動」などが芝居で上演されたことでさらに有名になりました。各種の随筆や怪談集にも化け猫の話が登場するようになり、多くの浮世絵にも描かれています。本展の最後には、そんな怖い化け猫の姿を描いた作品も展示されています。
レポート
八王子市夢美術館は、市民が気軽に親しめる「くらしの中の美術館」として、平成15年10月に開館した美術館です。ビルのワンフロアーというコンパクトな施設ではありますが、大きな美術館ではあまりみられない個性的な企画展を年6回程度開催し、年間を通して常設展も行われています。
同美術館にて今回開催されているのは、江戸・明治時代の猫が描かれた浮世絵を展示する展覧会です。出品作品は全部で149点で、そのすべてに猫が登場しています。ずらりと並べられた作品のどれを観ても猫の絵というのは、猫好きにはたまりませんね。展示室自体はそれほど広さがあるわけではありませんが、出品点数とその内容はかなり充実しているので、物足りなさを感じることはないと思います。すべて鑑賞するのに1時間以上かかりました。
浮世絵に描かれた猫は、当然今どきのデフォルメされたキャラクターのような表現ではないわけですが、猫がもつ本来の魅力がストレートに表現されていて、当時の人々が猫を純粋な目で見ていたのが伝わってきます。
その一方で、記事中で紹介している「おもちゃ絵」に描かれた、擬人化された猫たちもとても印象的でした。よく観ると、その振る舞いはもちろん、表情まで人間のように描かれていてとてもコミカルです。それでいてなんとも愛らしくもあり、観ていてとても癒されます。本展にはこのおもちゃ絵が数多く出品されていますので、1点1点細部までじっくり鑑賞してみてください。
ちなみに、平日の夕方ごろに行きましたが、お客さんは数人といった感じでとても空いていました。土日でなければそこまで混雑はしないと思いますが、平日でしたら夕方以降がおすすめです。19時まで開館しているので、お仕事終わりに行かれるのもいいかもしれませんね。
展示室入口前には図録をはじめ、かわいらしいオリジナルグッズがたくさん販売されていました。図録は、出品全作品の画像はもちろん、豊富な解説やコラムが掲載されています。しかも、展覧会中の作品解説と図録の解説は別のものが掲載されているそうです。価格は2300円です。
最後に
自宅にて3匹の猫を飼っている、いわゆる猫好きの自分にとってはたまらない展覧会でした。もちろん、有名絵師による作品ばかりですので、純粋に浮世絵展覧会としても楽しめます。
本展においてはなにより、猫が“猫らしく”描かれているという、一見すると当たり前のことに新鮮さを感じました。猫はわざわざかわいく描こうとしなくても、ありのままで十分かわいいのです。猫好きの方なら必ず楽しめるすてきな展覧会でした。本展は会期が比較的短めですし、会期後半になるにつれて混雑していく可能性もありますので、気になっている方は早めに行かれることをおすすめします。
以上『―国芳、広重、国貞、豊国、英泉らが描く― 浮世絵ねこの世界展』の見どころ紹介とレポートでした。
開催概要
会期:2018/04/06(金)〜2018/05/13(日)
開館時間:10:00〜19:00(入館は18:30まで)
休館日:月曜日 ※ただし、祝日の場合は開館し、翌火曜日が休館
会場:八王子市夢美術館(〒192-0071東京都八王子市八日町8-1 ビュータワー八王子2F)
観覧料
一般:600円 学生(小学生以上)・65歳以上:480円
※15名以上は団体割引料金(2割引)を適用※未就学児無料 土曜日は小・中学生無料
アクセス
●徒歩
JR線「JR八王子駅」下車北口より徒歩15分
京王線「京王八王子駅」下車徒歩18分
●バス
JR八王子駅北口からは、「6〜10」番乗り場、京王八王子駅からは「2、3」番乗り場をご利用ください。ただし、急行バスは止まりません。
※駅よりバスでご来館のお客様は、バス停「八日町一丁目」で下車してください。
高尾・陣馬方面よりバスでご来館のお客様は、バス停「八日町四丁目」で下車してください。
今回は「JR八王子駅」から徒歩で向かいましたので、その道のりを写真を使って紹介します。ちなみに京王八王子駅とJR八王子駅は、同じ通りに面していて、歩いてすぐの場所にあります。
JR八王子駅の改札がスタートです。写真は改札の内側から外側を撮影したものです。


改札を出たら北口方面(右)に進み、その先にある階段、エスカレーターを下ります。
階段を下りたら左に曲がり、ロータリーに沿うように進みます。


少し進むと交差点がありますので、その信号を斜めに渡ります。三角のモニュメントが目印のゲートをくぐり、「ユーロード」という歩行者専用道路(商店街)を終わりまでひたすら直進します。
「ユーロード」を最後まで歩き切ると、スクランブル交差点があります。ここを対角線上のローソンの方へと渡り、左に曲がります。
少し進むと「夢美術館東」という交差点があります。この信号を渡ったところにあるのが「ビュータワー八王子」です。美術館はこの建物の2階です。
正面の入口から中に入ります。
左側に看板があり、そこを左に入るとエレベーターがあるのでそれで2階に上がります。
エスカレーターを降りると正面がエントランスとなっています。そのまま進むとチケット売り場があります。
無料のロッカーが入場した先にあります。